管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 排水管洗浄 



 洗面、風呂場、台所、洗濯機。これらの排水管は、「雑排水管」と呼ばれ、年に1回は洗浄が必要です。皆さんのマンションでは、定期的に洗浄をしていますか?  (トイレは「汚水管」と呼ばれます。管の口径が太いので、清掃をすることはほとんどありません)

 ここでも毎年秋に実施されています。大事な作業ですから準備も大変です。掲示物の重要度は「最高」です。掲示以外にも回覧をまわします。しかし、「全室完全実施」が要求されるこの作業、これだけでは足りません。まず、過去に未実施の部屋をチェックします。2年連続の未実施は、その住居だけでなく、その排水管の系列の部屋に迷惑がかかります。絶対に避けたいです。直接出向いたり、手紙を入れたりして、「当日在室」をお願いします。困るのはやはり外国人とか、会社の寮のように使われて一体誰が実際に住んでいるのかわからない部屋です。これも、なんとか住民を捕まえて身振り手振り&過去の写真などを見せて理解してもらいます。
 
 回覧や掲示が浸透してくると、今度は「うちはその日はだめなのよ。別の日にしてくれない」「朝10時までならOKだけど。それ以降は留守」「夕方になってくれないかなあ」などの、都合です。ご希望にはなるべく沿いたいのですが、長いホースを移動させての作業で、あちこち離れた距離を動けないため、職人さんは「いちいちそんな希望聞いてられないんだよ」と渋い顔です。(まあ、それでも、けっこう融通をきかせてくれますが) まあ、希望を前もって伝えてくれるだけましです。シカトも多いし、当日急に「今日はダメ」という人もいます。

 こうやっても、予定の日に実施できるのは90%が限度です。部屋数が250もあると大変です。そのため、それから何週間後か、日曜日に予備日を設けて、再度未実施分を洗浄します。結局4(東2、西2)+1=5日間の作業です。これでも、2〜3戸残ります。(作業代金が安い業者は、この予備日を設けてくれないようです)

 準備はこれだけではありません。洗浄には高圧洗浄ポンプ機械を積んだ専門の特殊車両が使われます。これが、建物の中にきちんと入ってこられるよう、一番作業しやすい場所に駐車できるよう、セッティングしなければなりません。具体的には違法駐車車両を一切なくすこと、契約駐車場の車を一時的に移動してもらう交渉が必要です。

 実際の作業は最上階から順番に下の階に降りてきます。2台の作業車でも、1日に70室が限度です。部屋以外にも共用部分の排水管も洗浄します。管理人は「住民の部屋の鍵は絶対に預かるな」と指導されていますが、この時だけは組合さんからの依頼もあって、不在室の部屋の鍵を預かっています。(数日前から預かることもあって、保管に困ります。ここの管理人室には鍵のかかる保管庫がなく、しかたなくいつも身につけて保管します。家に帰る時も、いっしょに持ち帰ります)
 不在室の作業時は、洗浄作業員がおかしなこと(窃盗とか)しないように、鍵を開けた後もずっとついていなければなりません。(ただし、日曜日の場合は組合役員さんが鍵を預かります) 結局、作業の様子をずっと見ていることになります。部屋によって大きく違いますが、水周りがすごく汚い部屋があります。作業員さんは文句を言いながらも、その片づけをしてから洗浄作業に入ります。最近の洗濯機は大型のものが多く、排水口が隠れてしまっているのも多く、これまた大変です。ものすごい臭いにおいがする部屋もあります。女性の部屋では髪の毛がどっさりこびりついていることもあります。ペットの毛も最近は多いです。きちんと事前に準備している部屋は簡単に終わりますが、2倍3倍の手間がかかる部屋もあり、作業員さんたち、本当にご苦労様です。きちんと鍵を閉めて終わりです。

 ところで、作業員さんに毎回言われること。「普通排水管というのは重力で流れていくように傾斜をつけてあるものなのに、一部の場所で逆傾斜になっていて汚水が滞留しているところがあります。欠陥建築ですね」  そうなんです。困ったもんです。

 建設会社の責任者! 出て来い!




2003/5