管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 聞き上手 


「ちょっとあがっていかない? お茶でもいれるから」

 管理人の資質のひとつとして、「相手の話を聞くのがうまい」というのが挙げられると思います。

 最初のころ、清掃パートさんが、あちこちで住民と立ち話をしているのを見て、「何、仕事サボって、話ばっかりしてるんだ」と思っていました。しかし、あとでわかりました。住民の話を聞くのも大事な仕事だということが。

 このマンションのように、築20年以上になると、高齢者の人が増えてきます。1人暮らしも珍しくありません。みんな寂しいのです。しかし、相手をしてくれて、自分の話をずっと聞いてくれる、それも「無料で」となると、そんな暇な人はなかなかいません。だから、私たちが標的にされます。子供や孫の話、健康問題、嫁の話、などなど、話題はつきません。

 みんないろいろな不満や心配、愚痴を持っています。他人に話したから解決するものでもありませんが、他人に話すことでかなりのストレス解消になるのは間違いないようです。老人介護をするホームヘルパーさんも、「話し相手になってあげるのも大事な仕事」と言っていました。

 でも、正直言って私は苦手です。その点、清掃パートさんは、本当に素晴らしい聞き上手です。やはり年の功でしょうか? 私の場合、自分の興味のある話題なら、話は弾みます。健康問題も、入院経験豊富なため相手できます。でも、住民の家族関係や、離婚した息子のこととか、孫の就職のこと、・・・・ プライバシーに関することには、まったく興味ありません。いわゆる「ワイドショーネタ」みたいなものは、好きではありません。でも、自分の家族のことを、すみずみまで、詳しく話したがる人は多いです。私もなんとか相手が気持ちよくなるように、上手に相槌を打っているつもりですが、うまくいきません。住民は、しばらくして話し飽きると、私の次に清掃パートさんを捕まえて、また同じ話を最初から繰り返します。

 聞き上手になるのは難しいです。(なりたいとも思わないんだけど)

 これを読んでいる皆さん。

管理人が住民と立ち話をしているのは、仕事をさぼっているのではありません。これも大事な業務のひとつなのです。

そのつもりで見て下さい。もちろん、業務仕様書には入ってませんが。
 


2003/5