管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 古いマンションは仕事が多くて大変です 



2013/11記

 以前の会社で、サラリーマンをしていた頃。職場のあるビルの中で、設備管理をしている人と、ちょっと知り合いになって、「いやあ、ここみたいに古い建物は、設備の維持管理が本当に大変ですよ。新しいところに行けばよかったと後悔しています」とか、よくグチを聞かされていました。その時は、ムーディ勝山みたいに、その言葉を聞き流していたのですが、今となると、その言葉の意味がよくわかり、身につまされます。

 
 古いマンションは、ほんと、その維持管理は大変です。

<漏水>
築15年を越えて来るとボチボチ出始めます。20年を越えて来ると、「年に2〜3件」は発生します。漏水事故は、ほんと、あとの処理が大変なんです。特に、上の階の漏水場所の特定に手間がかかると、その調査工事が大変。せめて、昼間、家の中にいるご家庭ならいいんですが、「仕事があるから土日しか作業はできない」なんて部屋だと、漏水箇所の特定だけで2ケ月かかるなんてこともザラ。
そうなると、被害を受けた下の階の住民も、復旧工事ができないまま、ずっと待たされることに。
漏水って、加害者側も「自分は被害者だ」っていう意識が強いから、「下の階の被害者のところに謝罪の挨拶に行く」(形式だけでもやってくれるといいんだけど)ってこともしてくれないので、下の階は「なんで挨拶にも来ないんだ!」と感情のもつれにも発展し、その間に挟まる管理人はほんと大変。

<植栽の成長>

 岩手県盛岡市の県庁のところに、有名な「石割り桜」というものがあります。これは、桜が生長し、石を割ってしまったというものです。私も実物を見ましたが、見事に巨石が真っ二つに割れています。
 これって、珍しいものですが、実際には似たようなことがあるものでして。こういうのは、マンション管理上の盲点なんですが、植栽が成長することによる「その巨大な力」による「弊害」って、けっこうあるんです。

「根が伸びて太くなることによって、ブロック塀を倒してしまう」・・・これ、実際にあります。
「根が下水管の中に入って成長し、(なにしろ水分は豊富だから) 下水管を壊してしまう」
こういう「根っこの成長」による被害がかなりあります。

また、ごく普通に考えればわかりますが、植物が生長して大きくなれば、「花びらが落ちる量が増えて掃除が大変」「枯葉の量が増えて大変」「背が高くなったため、害虫が発生すると、3階のベランダの中にも入ってくる」・・・・などなどいろいろあります。
加えて、年数がたってくると、もともとの植栽の他に、「住民が無断で勝手に植えたもの」も大量に成長し、植栽管理にかける労力は倍増して大変なんです。

<設備の老朽化>
・水道関係は、15年目くらいから、あれこれ出てきます。(ポンプなんかは、7~8年でだめになったりします)
・機械式駐車場のあるマンションなんかは、日頃のメンテナンスも大変だし、25年検討で、機械の入れ替えもしないといけないし。機械式駐車場のことって、駐車場利用者以外は無関心だったりするから、その年の役員の中の「駐車場利用者の割合」によって、考え方が大きく変わるし。大変ですよ。
・共聴設備。テレビアンテナ関係も老朽化すると面倒です。屋外にある設備は、風雨の影響もあり、痛むのが激しいですし、機械本体の使用可能年数も比較的短いし。屋内の配線だって、20年もたてばいたんで、電波が流れにくくなるのも出現し。
・自動ドア オートロック。これも10年も経てばボロボロになり、トラブルが頻発します。オートロック関係は、部屋の玄関ドアの鍵と兼用になっていることが多いので、いざ、機械を交換しようとなると、これまた大変。ドアなんか、ものすごく頻繁に稼動する機械だから、すぐに傷む。
・集合ポスト。古くなって、ポストの扉が壊れてしまった。なんてのも多い。そして、こういうのに限らず、マンションの設備って、「もう、これと同じ製品は作ってないので、部品交換して修理する、ということもできない」なんていうのが多くて、修理にも苦労する。
・共用部分の蛍光灯の機械の故障・非常用バッテリーの老朽化。
・遊戯公園部分の設備の老朽化。 遊戯施設の老朽化って、場合によっては、「遊ぶ子供の命にかかわる問題」だったりするのに、マンション内の物の場合、公共の公園と違って、「点検要領」とか、決まっていないので、概していい加減な管理になり、怖いです。

まあ、とにかく、なんでもかんでも、設備というのは、古くなれば、故障したり、だめになったり。建築後20年以上も経過すれば、常にどこかの設備が壊れていて、理事会の議題も「あの機械の修理に関して」とかいうのが必ずある、という状態です。

そんなわけで、老朽化すればするほど、管理会社の仕事は増えていきます。工事代金で儲ける管理会社であれば、それは、ウハウハかもしれませんが、最前線の管理人は、毎日大忙しでたまったもんじゃないです。工事がいっぱいあっても、給料が上がるわけでもなし、ボーナスもないし。忙しいだけ。

ついでに言うと、「住民の老朽化による弊害」もいっぱいあるんだけど、それはまた別の機会に。








こういう建物の維持管理も大変なんだろうなあ。