管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

チェ! 自腹




もしくは「自腹 焼肉のタレ」

 
これは、私の好きな、キューバ革命の英雄「チェ・ゲバラ」。

私は、いつも、「また、自腹かよ、チェ」と嘆いているので、
「チェ・自腹」である。

さて、マンション管理人をやっていくにはいろいろな備品が必要なのだが、このマンションに関してはほとんどが、「チェ・自腹」なので、着任当初、かなりびっくりした。

なんでも、管理組合的には「管理人が必要なものは管理会社が揃えるのが当然だろ」という主張。これは日本の商習慣としては、ある意味もっとも。しかし、マンション管理に関して、国が指針としているものでは、「管理に必要な備品は管理組合側がそろえる」となっている。ただ、この管理会社は、そういう細かなことを書いて、管理委託契約を結んでいないので、これを声高に「こうなってますから」とは訴えられない。

さて、この管理会社では、「ほう き」「ちりとり」などのいわゆる「清掃用品」に関してだけは、「現場に支給する制度」があるが、その他は制度がなく、会計処理できないということで、結果 的にほとんどのものが自腹になってしまう。

読者の皆さんは驚かないで続けて読んで欲しい。

「ボールペン ノート ファイル はさみ クリップ 画鋲」などの事務用品・・・・私の過去の職務経験では、「当然、会社が支給するもの」なんだが、ここ では支給されない。全部自腹。書類を綴じるファイルなんか、絶対に支給すべきと思うが、とにかく、上記の理由で支給されない。私が大卒で新入社員で入った 会社なんかは、シャチハタの印鑑まで支給してくれたんだが。

「長靴 雨合羽」・・・これさ、雨天時の作業の必需品だと思うのに支給されない。自分で買った。

「切手」・・・毎月「出勤簿」を会社に郵送するし、「有給休暇申請」なんかも、フロント君がなかなかマンションに来ない場合は、郵送で送ることになる。でも、この切手代も自腹。封筒も自腹。

「湯沸しポット、扇風機(エアコンがなかった時代の話)、冷蔵庫」・・・・冷蔵庫はたしかにぜいたく品かもしれないが、これらも自腹で購入した。という か、前任者が買った物が壊れたときに、買い替えの際に自腹を切ったということ。買い替えというのは、壊れたものを、粗大ゴミ(有料)として出す必要があ り、いっそうお金がかかる。
どうせ自腹なら、電子レンジも買ってしまおうかと思っている。

「PCセット」・・・・管理組合の人間が書類を書くことがまったくなく、掲示物も、差出人は理事長名でも、実際は管理人が書いている。前任者は書類は全部 手書きだった。そして、フロントはまったく仕事をせず、「会社でこういう書類を作ってよ」と頼んでも何もしてくれない。「面倒だから、自分で作る!」と PCやらプリンターやら、いろいろ揃えた。
年をとってきて、目が見えにくくなり、大きなモニターが欲しくて買い換えたりしているので、今のPCは3代目。
紙代は安いが、バカにならないのがプリンターのインク代。けっこう高い。
ちなみに、ネット環境はなく、このPCはほぼ「オフィス」専用になっている。デジカメ画像の保存もしている。
書類を全部PDF化して省スペース化する計画も個人的にはあるけど、組合でPCを買わない限り、やらないつもり。私の後任がPCを使えるとは限らないし。

「エアコン」・・・最初エアコンがなく、夏は死んだ。真夏に、その時の理事長を無理矢理管理室に連れ込み、いろいろ長話をして、エアコンがないことがどれ だけしんどいか実感させ、やっとこさ、購入設置してもらった。しかし、最低機種。それでも、いいんだけど、「安物は壊れやすいから。せめて長期保証に入っ てください」と懇願したのに、聞いてもらえず、案の定、14ケ月目で故障。保証期間経過後なので、修理代が2万円。「修理代くらいは管理会社が払え」と、 その時の理事長が言い、会社は、「涼むのは管理人のぜいたく」とかなんとか言って、自腹を切らされた。
(現在の生活保護世帯では、エアコンは必需品ということで認められているそうだ。管理人は、生活保護世帯よりも虐げられているのか? 悲しい)

「草刈道具」・・・草刈を外注するのをケチる管理組合のせいで、なぜか、契約範囲以外なのに、時々、清掃員さんといっしょに草刈をやらされる。大きなマン ションで土地も広く、重労働である。この時は、管理組合は、無理矢理押し付ける後ろめたさが少しはあったようで、「鎌などの道具はこっちで用意するよ」と 支給してくれた。でも、100円ショップで揃えた安物。刃物って、値段で全然違うんだよね。切れ味最悪。切れないというのは、非効率というだけでなく、刃 物の場合は、「切れないものほど危険」のため、労災にも直結する。「こんなんじゃ、1年やっても草は刈れない」と頭にきて、「もっと、いいものを買って欲 しい」とお願いしたが、「これを買ったんだからこれでやれ」と言われる。しょうがないので、2万円くらい出して、切れ味のいいものを買い揃えた。(さすが に高いものは切れる) 長年使うので、砥石も揃えた。鎌の刃を研ぐ管理人なんて、他にいるのだろうか?

「テプラ」・・・・これ、あるとすごく便利なので、前々から「買って欲しい」とお願いしていたが、無理だった。電気屋の安売りの時に自分で買ってしまった。

「キーホルダー」・・・管理人はいろいろな鍵を預かっている。もともとついていたキーホルダーは汚い文字で書いてあり読みにくい。「きれいにしたいので新しいキーホルダーを買って欲しい」と頼んだがだめだった。自分で買って、テプラシールを貼ってきれいにした。

「FAX電話機」・・・着任時は黒電話しかなかった。しかし、工事業者なんかは「じゃあ、見積もりをFAXします。番号は何番ですか?  え? そこ FAXないんですか!!」と驚いてばかり。業務上不可欠のものなので、「必要です。買ってください」とお願いしたがだめだった。自腹で買った。今は、管理 組合役員が「じゃあ、これFAXしておいて」としょちゅう命令する。インクリボン代がけっこうかかる。

「ゴミ回収容器」・・・ゴミ分別方法の改変の際に、「電池は電池用の専用回収箱を作ってそこにまとめて入れてください」と市側から言われたので、その箱を 買って欲しいと頼んだら、「今までなかったことだから」と断られて自腹。新しい制度なんだから、今までないのは当たり前じゃん!

「防災関係」・・・今回の3.11震災を教訓にいろいろ買ったものがある。「AMラジオ」「LEDライト」「ヘルメット(以前から持っていたが今回清掃員さん用も 購入)」「拡声器(放送器機がないからこれがないとマンション住民に連絡できない)」 これも買う際にはお願いしたんだけど、「別になくてもいいもんだろ う」って言われて、チェ。自腹。


今、改めて、自腹で買い揃えたものの金額を計算してみると、おそらく、総額で100万円にはなっていると思う。
普通の管理人は、「駐輪費を5年間で100万円横領した」とか、私腹を肥やすもんだけど、オイラは、逆だもんなあ、トホホ。奉仕活動か??? 逆に言うと、管理組合は、「100万円を節約した」ということになるのかなあ。
こっちの考えじゃ、「100万円を寄付した篤志家だぞ」、と言いたいが。

ところで、「清掃員」さんに関しては、「清掃道具は会社で支給されるから自腹じゃない」はずなんだけど、プロの清掃員さんからすると、「会社で支給するガ ラスクリーナーは汚れが落ちない。アムウェイの**がいい」とか、こちらもけっこう自腹を切ってる。たしかに、ゴミ袋なんかも薄いものしか支給してくれ ず、すぐに破れて困っている。経費節減なのか、軍手が安物のゴワゴワしたものに変ったり、質を落としているので、「これじゃ、仕事にならない」と自前で用 意していたりして、もう、ほんとに自腹地獄。

<追記>
いろいろと過去の記憶を紐解いていたら、「珍しく、管理組合が太っ腹で買ってくれたもの」を思い出した。

「駐輪場の料金とか市民共通共済の申込金とか消火器共同購入のお金とか、そういう現金を扱う仕事を管理人に押し付けるのはやめてください。この管理人室のデスクは鍵もかからないんですから」と理事長にお願いしたことがある。そうしたら、その時の理事長は「だったら、鍵つきのデスクに交換するから、それなら文句はないだろう」と言って、自分でホームセンターに行って机と椅子を買ってきてしまった。当時のデスクは別にボロボロでもなく、まだ使えたのに、この新しいデスクと交換になり、とてももったいないことをした。

 さて、新しく届いたデスクなんだけど、これがちょっと変っていて、鍵はたしかについているけど、鍵の位置と鍵がかかる引き出しの位置が合致してなくて、一番大事な「現金を保管する引き出し」に、なんと鍵がかからなかった。そういうわけで、ほんと意味のない買い物だった。理事長がアホだった。そして、このデスクといっしょに来た椅子がなんともヤワで、1年ですぐに壊れた。この時に、「新しいのを買ってください」とお願いしたら、その年の理事長は、「使い方が荒いからいけないんだ。自分で買い換えろ」と言い、これも自腹を切った。
 こんなのばっかり。トホホ。




2011/9