管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 平等とは?2  サービスについて


 

 管理人というのは、あれこれと、「もらいもの」がある仕事です。「役得」といえるかもしれませんが、実際は「ゴミの処分」だったりするため、そんなにいいことではありません。また、「規約違反してるけど、大目に見てよ」という賄賂的な贈り物だったりすることもあり、そのあとに気を使うことを考えるともらいたくないものです。冷凍冷蔵庫がない管理室なのに、勤務中に「これ食べて」とアイスクリームをもらい、「溶けたらもったいない」と、食べていたら、「管理人が勤務中にアイス食べてる」と会社に通報されたこともあり、「もらってもろくなことはない」というのが正直なところです。
 ですから、「いいえ、もらえません」とたいていは断るのですが、向こうも、「わざわざ持ってきたのに」「人が好意であげるのに、それを無視するのか!」と怒る人がいて、しぶしぶもらうことがあります。(断ったら断ったで、そのことを根に持って、会社に「管理人が私をバカにした」と通報する人がいます。こういう時の通報は、「品物をもらわなかった」と正確に言わずに、匿名で、抽象的に言うのです。ほんと、始末に負えないです)

 私としては、柔軟に対応しているつもりなんですが、潔癖症の管理人さんは、「私は絶対にもらわないんです」と宣言している人も、ごくまれにいます。本人としては、「会社に言われたとおりに忠実に仕事をしている。誰にでも公平に接している」という誇らしげなつもりなんですが、住民からは、「融通が利かない」「堅物」「住民のことを考えていない」と悪評をたたかれ、飛ばされる人もいます。潔癖症も良し悪しですね。

 先日、クーガーズマンションの管理会社が、住民向けに出している季刊報を見せてもらいました。これには毎回、どこかのマンションで働く管理人の紹介記事があります。今回の人は、「私は誰に対しても平等に接しています」と書いてありました。「立派な人だなあ」と素直に感心したものの、「平等なサービスって、なんなんだろう?」とも思ってしまうのです。

 住民が管理会社に払っている管理委託費の元になるのは管理費です。管理費は、普通、部屋の広さによって算出され、広い部屋は高く、狭い部屋は安いです。これは、大部分の賛成を得られる算出方法ではありますが、全員の賛成は得られないでしょう。一種、苦肉の策のような気がします。
 一部屋で4人住んでいる家族もあれば、4LDKに一人暮らししている独身貴族もいます。エレベーターの利用回数が4倍の人が、4分の一の管理費しか払っていないのです。なんか変です。
 
 管理人が提供するサービスに限って考えても、「管理費を払わない、滞納者のために、督促状を書き、配布する。その部屋が賃貸の場合は、切手を貼った封筒に入れて、ポストまでいって投函する、といった、莫大な労力をかけている。」、これは不平等じゃないでしょうか?
 「そんなことはいいんだよ。問題となるのは、例えば、自転車の駐輪費を管理人室に払いに来た住民が並んでいる時みたいに、比較しやすい状況で、平等にしなければならないんだよ」という人もいます。でも、そういうケースでも私の場合、うしろに足の悪いご老人が並んでいると、「ちょっとごめんなさい。○○さん、先にやりましょう。はい、この申し込み用紙に書いて下さい。え? 読めない? あ、そうか、老眼鏡忘れたんですか。私のを貸してあげますよ。これ使ってください。・・・・・」と、時間をかけて丁寧に接します。若い健常者にはさっさか対応します。これって、老人をいたわる思想のない人から見たら、一種のえこひいきですよね。

 また、チビッコに「えらいねえ。いい子だねえ」と声をかけるのも、子供の嫌いな人にしてみれば、「ガキを特別扱いしやがって」となるでしょう。でも、子供に普通に接していると、その親からは「愛想のない管理人ね」と後ろ指さされます。
 昨年から、ゴミの分別が変わったために、「これはどう出すの?」「これは何の分類?」「これ、大丈夫?」と、疑問をひとつ浮かべるごとに聞きに来る人もいます。聞きに来るということは公共心の高い熱心な人なわけで、そういう人に対しては、親切丁寧に説明します。でも、はたから見ると、「いつもあの人とばかり話をしている」と誤解する人もいるでしょう。

 管理人のサービスって、ものすごい差があると思います。独身で昼間マンションにいない人なんかは、何年たっても、一度も会うことはありません。ですから、ほとんどサービスをしていません。でも、毎日顔を合わせて話す人もいます。お年寄りや体の不自由な人は、それなりに気を使ってサービスします。
 また、当人からは嫌われていますが、規則違反を繰り返す、問題住民には、ものすごい手間をかけて対応しています。これも管理人のサービスです。

 こうやってあれこれと考えをめぐらすと、「平等ってなんだろう?」と悩んでしまいます。人によって、受け取り方も違う状況下、誰からも、「この管理人は平等なサービスをしている」と言われるようにするにはどうしたらいいのかなあ? とつくづく考え込んでしまうわけです。そうやってしかめっ面をしている時の接客は、相手に悪い印象を与えるかもしれないし。うわ〜 悪循環。

 何も考えずに、自然にやるのが一番なのかも。聖人君子じゃないし、とにかく、「よりよいサービスを追求する」ような、たいそうな給料はもらってないし。今の待遇からすると、「誰にもサービスしない」のが、一番妥当かも???? 
 


2005/7



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