管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

管理人に向いている 向いていない




 わずかな知識でこのようなことを論じるのはおこがましいとは重々承知してますが。

 管理人さんて、「もうずっと長く同じ人がやってる」場合もあれば、「コロコロ替わる」「3日でいなくなった」というケースも多々あります。

 その理由を考えてみると、
<待遇面での不満>・・・これは大きな要因ですが、入社時に聞いていることなので、了承済みのはずです。ただし、しばらくしてから、「不況のため、賃下げします」なんていうのもあり、「これ以上下げるのか。ふざけるな」と辞める人もいます。

<仕事内容の誤解>・・・「ちょこちょこっと掃除して、あとは”受付”として管理人室に座っていればいい、楽な仕事ですよ」と聞いていたのに、1日の大半を掃除に関わってクタクタ。これじゃきついきつい。楽じゃない。
「え? 町内会のこともやるの?」「寄付金集めもやるの?」etc 「そんなことまでやらせるの?」 聞いていない仕事がいっぱいです。

 このように事情はいろいろあるんですが、一番の原因は精神的ストレスのようです。つまり、私が日頃愚痴にしている「マナー違反住民がいかに多いか?」「管理人は苦情処理係か?」「なんでもかんでも管理人がやるのか?」という点です。

 先日、ネットサーフィンをしていたら、「管理人はいまや狭き門に。優秀な人材も多数出現。元銀行支店長、元有名デパートの販売部長が管理人になっているケースも。接客業のプロだから、安心・・・」といった記事が出ていました。おそらく、ちょうちん記事だと思います。「管理人も良質になっていますよ」といいたいのでしょう。(待遇は悪くなる一方なのに、良質になるわけないのにね)

 管理人さんになる前の職業というのは人様々です。「会社で経理をしていまして、人と接するのは自信はないんですが」と心配する人もいますが、こういう人にとっては、管理人という仕事は先入観なしに入ってこれる、まったく違う職種なので、ある意味、誤解が生じにくく、「こういうものなのか?」と意識の切り替えができれば、長続きするかもしれません。もちろん、接客に向かない人はすぐにやめます。

 意外なのは、「お店をやってまして、接客には自信があります」「小売店で働いていましたから、客あしらいは問題ないです」といった”接客のプロ”だった人が、「自信がみごとに崩された。私にはできない」とやめてしまうケースが多いということです。なまじ自信があったために、現実の壁にぶつかると、もろくも崩れてしまい、立ち直れないようです。これは、管理人業を経験しない限り(もしくは、当サイトを隅から隅まで全部読む)、理解できない感覚だと思います。
 有名デパートの部長さんで「私は接客のプロ」といっても、それは”限られた客”の”限られた一面”に対する接客であって、そのお客さんのすべてに対面するわけではありません。有名デパートであれば、そこを訪れる客層はある程度”上級”でしょう。ホームレスまで相手する管理人とは違います。また、デパートで客が見せる顔はあくまでも”外面”です。裏の顔までは見せないでしょう。デパートで泥酔してゲロ吐く人もいないでしょう。ひどい客は「あんた出て行ってくれ」と追い出すことも可能です。警備員も別にいます。困ったら上司に相談することも可能です。仲間もいるでしょう。しかし、マンションというのは、「お金さえあれば誰だって入れる所」です。そして、そこで生活しているのです。つまり、表の顔も裏の顔も両方に接しなければなりません。そして、どんなひどいことをしようが、追い出すわけには行きません。そこに住んでいるのですから。そして、管理人は数々の困難に一人で対応していかなければなりません。管理会社の応援は期待できません。

 ですから接客業のプロであっても、そう簡単にはできない仕事なんです。そして、真面目な性格で一生懸命に働く人(管理組合の指示に忠実に従い、住民の皆さんの役に立とうと頑張る)ほど、ストレスが溜まっていくのです。ある程度、ちゃらんぽらん、いい加減、適当、ずうずうしい、厚顔無恥な人でないと務まりません。

 管理会社の採用担当者も、管理人の実態をよく調べてから、採用の基準を決めて欲しいなあ、と思います。ライオンの檻に生肉ぶらさげた人間をぶちこむようなことはやめましょう。すぐに殺されます。


2004/12