管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

管理人の守秘義務



 こんなサイトを運営していて、「守秘義務」など論じる資格はないんですが、掲示板で振られた話題なんで、ちょっと一言。

 まず、当サイトに記載されている内容は、すべて私が頭の中だけで作り出した妄想・空想・想像であり、フィクションです。実在するマンションとはなんら関係はありません。その点を前提条件としてご確認下さい。フィクションですから、写真を使用した説明もなく、文字だけの非常につまらないサイトになっています。


 さて、今はどの職業でも守秘義務に関してうるさいですが、管理人はその性格上、お客様の生活に関することも知りうる立場にあるため、守秘義務は厳格に守らなければなりません。

 管理人に採用されて初めて受ける研修では、このことは重点的に指導されるはずです。私の場合研修はありませんが、渡された「心得」(業界団体の発行)にも、大きく載っていました。それだけ大事なことなのです。といっても、最初だけ厳しく指導されるだけで、あとはなんにも指導されることはありません。

 ただ、守秘義務が問題となってくるのは、最初の頃よりも、1〜2年たってからのことが多いので、その時期に再度研修しないと意味がないと思います。というのも、最初の頃は右も左もわからず、仕事内容はもちろん、住民のプライベートのこともわからず、知りうる情報が少ないからです。1〜2年経過すると、仕事も覚え、また、個人的に仲良くなる住民も現れて、得る情報量が飛躍的に増えてきます。そして、親しい住民と話をしている時などに、ポロっと他住民の個人情報などを漏らしてしまうことがあるんです。1回口から出た情報というのは、どのように広がるか予想がつきません。「Aさんにところ子供が生まれたみたいですよ」といった、常識的には他愛のない話でも、気にする方は「なんで、管理人がそんなプライベートなことを、他人に言うのよ」と怒られることもあります。ほんと、注意が必要です。

 私の個人的なスタンスとしては、住民のことには基本的に無関心ですから、特に家庭内のことにはクビを突っ込みません。親しい住民とも、スポーツとか、時事問題とか、一般的な話でごまかして、プライベートな話題にはいかないようにしています。聞きたくもありませんので。それでも、こちらが何も聞かなくても、「嫁の話」「孫の話」をひたすら長々と話し続けるおばあちゃんもいます。仕方なく相手しますが、ただ相槌を打つだけで、頭の中を通り過ぎていくようにして、記憶に残しません。(頭が悪いから「残らない」という利点もあります) 住民と話をすることも仕事のうちかもしれませんが、特に自分から積極的にいくことはありません。知らないほうがいいこともたくさんありますから。正直うざったいです。みのもんたみたいに、奥さんの愚痴話を聞くだけで何億円ももらえるなら、うれしいんですが。

 気をつけなければいけないのは、「管理業務上知り得た情報」です。例えば、”管理費滞納”。理事長には全部教えますが、他の一般組合員には教えられません。それでも、「今は、不況だから、管理費払えない人もいるでしょう?」「はい、いますね」「○○さんとこ苦しいみたいだけど、あの人も払ってないんじゃないの?」「・・・」みたいに質問されることもあり、口をすべらしそうになることもあります。

 業者からの質問もあります。例えば、「ガス湯沸かし器の調子が悪いような部屋ありませんか?」みたいなもの。業者としては、得るとうれしい情報です。こういうのも、基本的には教えないんですが、「かなり親しい業者で、当マンションでの工事実績も多数ある」「他の業者よりも安価」のように、「同じ工事なら、他の業者よりも、この業者にやってもらったほうがお客さんも喜ぶ」みたいなケースでは、教えたほうがいい場合もあります。難しいところです。

 あと、悩むのは、新しく入居する人がやってきて、「今度、○○○号室に入居する△△です。よろしく。ところで、管理人さん、うちは小さな子供がいて、うるさくするかもしれないんですが、階下の××さんて、どんな人ですか? 神経質な人だと具合が悪いんですが」みたいな質問です。「いや、大丈夫じゃないですか。××さんのところも子供がいて、理解できるはずですよ。それにすごくいい人ですから」みたいに、ほめ言葉なら言えるんですが、「すごい神経質で嫌味な性格なんで注意してください」とは言えません。最初に言っておいて、用心してもらうほうが、あとあとのトラブルは避けられるでしょうが、悪口のようなことを言うのもよくないし、なんとかオブラートに包んだように、意味を伝えるようにしますが、難しい応対です。あとで当事者同士が喧嘩になって、「やっぱり、あなた、管理人さんが言ってたみたいに嫌な人だわ」なんて言葉が出たら、そのあとは大変です。ボロクソに怒られるでしょう。

 警察とか役所などからの質問も多いです。公的な機関からの質問の場合は、答えざるを得ません。ただし、最近は偽物役人も多いので、「身分証明書を見せてもらう」「名刺をもらう」「なんか、あやしい場合は、”変なのも多いんで用心のためにおたくの顔写真をとらせてもらうけどいい?”と聞いてデジカメで撮影する」などの予防策を取っています。この質問でも、「子供は何人?何歳?」など、答えがはっきりしているものはいいのですが、「国民健康保険料をずっと滞納してるんだけど、生活大変なのかな? 管理人さんどう思う?」みたいな質問は困ります。そんなことは感じ方によって答えがいくらでも変わる質問です。

 売買の際の不動産業者からの質問も困ります。管理人の発言が査定に響くことがあるからです。「インターホンが調子悪いみたいです」と不動産屋に答えたら、あとで売主から「”インターホンを替えなければいけないから”と、その分査定が低くなった。管理人が余計なことを言わなければ、下がらなかったのに。どうしてくれる!」みたいな苦情が出たりします。売主としては、買主が気がつかなければ、そのまま売ってしまいたいわけで、余計なマイナス情報を伝えて欲しくないのです。でも、伝えないと、今度は買主から、「知ってたのに、なんで教えなかった」と叱られるわけで、これも困ります。

 このように守秘義務の問題は非常に難しいもので、テキストの数ページで説明できるものではありません。

 管理人として、住民の人にアドバイスするとしたら、「管理人に教えることはいずれ必ず漏洩する。誰に言ってもいいことだけ話し、秘密事項は絶対に管理人に言うな」と教えたいです。世の中、どんな管理人がいるかわかりませんから、「管理人性悪説」とでもいいましょうか、最初から信用しないほうが無難です。

とにかく、無駄口は叩かないこと(管理人も住民も)。情報はどこからどこへ伝わるかわかりません。

S学会さん、選挙が近くなると住民の個人情報をいろいろ聞いてくるんですが、これも困ります。

2004/8