管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

代務要員


 私は、「有給休暇をとる時は取る」というふうに気持ちを切り替えた人なので、そういう時は、代わりの人間がやってきます。といっても、いい加減な会社なんで、専用の要員を持っているはずはなく、地域の自治体の「シルバーさん」というご老人を単発で雇って来てもらいます。

 この1年間はずっと同じ人が来ています。この人、勤務初日の前日に、わざわざ「下見です」といって現れたことがあって、「相当高齢な老人だけど、やる気ある人だなあ。良かった、いい人が来てくれて」と思いました。管理人業務は初心者のようなので、簡単なマニュアルを作成し、その日その日にあわせた情報(たとえば、「今日はエレベーター点検があります」とか)を加えた、引継ぎ文書も残していきました。そのせいか、無難にこなしていたようです。

 しかし、何回か経過するごとに、仕事が「手抜き」「雑」になってきました。「何かあったらメモでいいから記録を残して置いて」と頼んであるのに、何にも残っていない。何があったかさっぱりわからない。「細かな作業だからやらないで」とお願いしたことをやってしまい、案の定失敗していて、やり直し。大事な書類を紛失。いろいろあります。7月から3月なら9ケ月なのに、8ケ月で計算したり、完全にボケてます。
 清掃パートさんに聞くと、「何もせずに椅子に座ったままで、タバコ吸ってるだけ」とのこと。道理で部屋中が臭いわけだ。座ってるだけでもいいけど、「難しいことはわからないため、いつもの管理人が戻ってきてからまた言ってくれませんか?」とあしらうのもいいけど、「誰が」「何の用件で」くらいは残してくれないと、こっちも困ります。引継ぎ書類に書いてあることを「知らなかったから」と弁解されるのも困ります。
 最近は、「いいなあ、この仕事は楽で・・・」とかつぶやいているそうです。そりゃそうです。何にもしないんだから。
毎回、新品の軍手を「これ使って下さい」と机に置いていますが、まったく使われていません。ゴミ置き場の清掃もすべてパートさんにやらせてるみたいです。

 いくら時給850円でも、もうちょっとしっかり働いてもらわないと。留守番ぐらいちゃんとやってよ。シルバーさんだからといっても、もう少し元気な老人を派遣できないのかな? 紛失書類を探し出すのに半日もかけてるこっちはバカらしいんですけど。 次回はさすがに人を変えてもらおうっと。


 それとはまったく正反対な話。

 今度は管理人ではなく清掃員の代番者の話。以前、清掃のAさんが体調を崩して2週間ほど休んだ時に、やはりシルバーさんのおばあさんが来ました。この人はとにかく仕事熱心。まず、出勤時間が早い。早すぎる。彼女は管理室の鍵を持っていないため、私が来るまで待っていなければなりません。「勤務開始時間ちょうどに来てくれればいいですよ。早く来ても入れないし」といってあるのに早く来ます。そして、10分以上待っていたのに、「今ちょうど着いたところ」とかウソをいいます。そして、勤務開始まではまだ10分もあるのに、さっさと着替えて、すぐに清掃開始。早い早い。中休みも、15分認められているのに、管理室で私の入れたお茶を一口飲んですぐおしまい。また外に出て行きます。季節は真夏で外は炎天下。「今日はきついですから、適当に休まないと死にますよ」といっても、黙々と仕事をしています。なんで、こんなに真面目なんだろう? すごい体力です。前述の管理人代番と違い、期間中ずっと同じ調子でした。一点、困ったのは「Aさんはこういうやり方でしたよ」といっても、「私は私のやり方でやるから」と自我を通す点。ですから、お願いしたとおりには清掃してくれません。ちょっと困りました。
 早くは来ますが、帰るときも早くて、時間ちょうどにさっさと帰って行きました。

 上記2者、内容は正反対ですが、共通点は「マイペース」ということ。老人の特質です。


 



2003/10


「おじいちゃん。お疲れ様」